やさしさに包まれたなら/荒井由実

2017/01/03 [和声学]

【ユーミンの魔術】

「やさしさに包まれたなら」(1974)
作曲:荒井由実

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日本の音楽界で「旋法性」を学ぶのにより適した例はシンガー・ソングライターの作品に多い。その中で音大出の作曲家よりも遥かに強度が高いのがユーミンである。

上記の譜例はオリジナルの音だけを並べたものと、そのコード、調性の動きを概観したものである。
見てほしいポイントは、

・古典的機能和声でハーモナイズした時との響きの違い。
・メロディの持っている民謡的な動きと終止音
・メロディとコードのずれ(F#音)とそれを一切「メロディ」の中には表出させない巧みさ

である。
凡庸な作曲家であれば、この曲を単なるCMajor Keyの曲と解釈するであろう。
しかしユーミンは「ウタ」によって古典的和声を掻い潜るかの様に音楽を進めていく。

恐らく、ご本人にその自覚はないであろうが、これがなかなかできないのが凡人なのである。
本来、皆が持っていた「ウタ」を「機能和声」という破壊力の極めて高い論理でぶち壊してしまっている音楽の如何に多いことか。

そこに気付かずに「調性音楽は終わった」と一気に無調、非機能化、音響化に走ったのが西洋音楽の進化の一面である。
それはそれで面白いものではあるのだが、本当にこの旋法の魅力を理解し説明できる作曲家の如何に少ないことか。

ブルースも同様である。
コツは「四和音三和音単音(根音)」に戻ってみること。ウタが持っている調性に気付くこと。
これだけでも多くの可能性があることに気づいて欲しい。

※C.の調性分析はあくまでもコーダルなものであり、メロディは決してAのDorianではない。そのズレにカギがある。

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