映像音楽の作り方(超・手抜き講座)

2018/12/07





例えば、スピルバーグから「月の住人だった男がお役目を終えて、地球から月に帰るシーン」が送られて来たとします。

これを「ラッシュ」等と呼びます。
無音の動画ですから、自分でそこに音を付けなくてはならない。

「虫の鳴き声」とか「コップを叩いた音」等を付けても良いのですが、大抵は「音楽を付けて」と求められているので、大した予算が無ければ責めてDAWなどでオーケストラっぽいものを付けることが求められている事が多いのです。

メロディは要るかな?
コードプログレッションだけでもいける?
いや「ジャジャーン」とか「こけおどし」の音響で行くか等と監督の意見や方向性が決まれば後は自分の頭の中に音を鳴らす作業に入ります。

意外に大切なのが「映像が持っているテンポ」を掴むことです。
えっ、映像にテンポなんかあるの?
と思われるかも知れませんが、これが有るのです。

それは画面の人物の歩行速度、話す速さ、景色の移り変わり、心臓の鼓動、呼吸etc.
複合的なのですが、そのなかで一番に観る人がどんな気持ちかを考えてフォーカスをします。

テンポが決まったら次は浮かんだ音を音符に変えて行きます。

ここでいう「音」とは、音楽理論的に合っているかどうかはあまり関係がありません。
映像としっかりリンクしているかどうかが問題なので、出来上がったものは音だけ聴くと何だか分からない様なものでも良いのです。

次に楽器の割振り、音色の決定です。
思い付いたサウンドが極力効果的に鳴るようにはどんな編成が良いのかをまるで料理中の調味料を考えるように吟味します。

ただ、出来上がってみたものは「こんな和音は有り得ない」ですとか「楽器法がおかしいとか」なんて事が起きますがどうでも良いのです実は...モチロン、あまり突飛なことをすると保守的でアホな観衆の心を掴むのは難しいので、過去の映画などを参考に「よくあるサウンド」を書くことが初級者には求められます。

映像音楽家として認められて「世界のナントカ」などと言われだすと、少し自由度が上がる場合もあります。

「監督!ここは音楽要らないよ」
「ピアノだけでやってみてもいいですか」
「敢えて映像と反対の性格を持つ音楽を付けたい」
などと「好きにやらせて」が少し言えるようになってきます。

悲しみに暮れているシーンでも、その先に思いがけないハッピーエンドが待ち受けている可能性があったりしたら「希望の光」が見えるサウンドを付ける方が良いかもしれません。
いや、ここはトコトンどん底に落とした方が後のハッピーが際立つかも等と考える訳です。
つまり音楽でネタバレを起こすこともできるのです。

最近のドラマや日本映画がつまらなくなったのは、こういった作業を省き出したのです。とりあえず「明るい曲」でアップテンポとバラードを何種類か。
「切ない系」を3曲くらい。
など、決めうちで作曲家にサンプルを作らせて、ひどい場合は選曲家が切り貼りするわけです。

こうなってくると作曲家は映像を観る必要が無くなってきます。
台本すら読まなくても成り立ってしまうこともあるかもしれません。

昔はこれをリアルタイムでやっていたのです。「活動写真」と呼ばれていた頃はピアニストが即興で音を付けたりとか。

予算の関係でタイアップなんてものが出来たので、いきなりここにジャニーズの歌が入ってきたりとかもあるのです。
下手したらそのせいで映像を修正したりとか。本末転倒もいいところです。

試しにドラマや映画を観ながら、それに音楽を付けてみる。それから答え合わせの様にプロがどう付けたかを確認照合してみるのもいい練習になります。
少なくともジェリー・ゴールドスミスとかバーナード・ハーマン、エンニオ・モリコーネ、ジョルジュ・ドルリュー等の巨匠はメロディベッタリとか、音響イケイケだけでは付けていません。
画像が安っぽくなってしまうから。

映画なのにファミコンの様になったり、ディズニーの様になることを「ミッキーマウシング」なんて呼んだりしているのはその為です。


文責:彦坂

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