【クインシー・ジョーンズ自叙伝】 河出書房新社/中山啓子訳

2018/12/11




クインシーは本来はジャズの人であった。
それがあまりの多芸多才に生来の人の良さと、女癖の悪さ(コミュニケーション能力が高いが満たされていない人間に多い)が加わり、流れ流れて「ポップでヒップなプロデューサー」としての評価の方が高くなってしまったようなところがある。

彼は心底カウント・ベイシーを崇拝し、ビバップを愛するジャズマンであり、マイルスもシナトラ認める程のアレンジャーであった。
ヘレン・メリル、天才クリフォード・ブラウンと名盤を残したり、ジャズ・レコードにも数々の金字塔を打ち立てているのである。

マイケル・ジャクソンを見い出し、「We Are The World」で全米のオールスターを集めてセッションをしてしまった彼の功績は計り知れない。彼の周りでは結果的に黒人も白人も関係が無くなったのである。

しかし、そんな彼の人生は仕事と金と女(母親も含め)に追いまくられたものでもあった。
究極的には「家庭」というものを知らず「孤独感」を常に抱えていた男なのである。

クインシーが、まだまだマイノリティである黒人として、ジャズだけではなくもっと大きな分野で活躍することは選ばれた人間の使命なのであろうか。

周りが放っておかなかったし、クインシーはそれにいちいち応えてしまう人の良さと器用さがあった。「守備範囲」が広すぎることが彼の全貌を分かりにくいものにしているのは否めない。

スピルバーグの映画「カラーパープル」をはじめとして、数々の映画音楽のスコアも書いているし、驚いたのは彼がパリに留学しナディア・ブーランジェに教えを受けていたということである。
厳しいことで有名なナディア女史が「影響を受けた音楽家はクインシーよ」と言ったそうであるから本当に魅力と才能溢れる人間なのであろう。

今、彼はどんな生活を送っているのだろうか。こんなに波瀾に満ち満ちた人生を送るのは並の人間には不可能である。

本の内容も個々のエピソードもユーモアに満ち溢れていて素晴らしい。是非、多くの音楽家に「本物」に触れてほしい。


 



文責:彦坂

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