L.C.Cにおけるハーモニックマイナー・スケールの扱いは?

2019/07/15

濱瀬元彦・著「ブルー・ノートと調性」P.36には「リディアン・クロマティック・コンセプトに和声短音階が組み込まれていないのは何故か説明が必要だ」と書かれており、それが「調性音楽すら捉えられていない片手落ち」のように書かれている。

ただ、彼自身も「理解不足かもしれない」と前置きしているので、これは深く学んだと自認する者として説明をしようと思う。

このコンセプトは確かに「倍音構造に忠実か否か」や「♭9thの例外的な扱い」、調性引力における「#方向と♭方向の距離感の差異」などにおいて、申し開かなくてはならないような場面に出くわす。

しかし、機能和声が旋法音楽やブルースに対して拒絶反応しか示せないのに対し、このコンセプトは機能和声を否定せずに「調性」を幅広く感得する足掛かりを作った功績は多大なのである。
すぐに「ポリコードだ、ポリモードだ、無調だ」と昔のブラウン管テレビのチャンネル回しの様な対応しかできていない西洋音楽家が見ていない「帯域」を明確に照らし出したと言える。

さて、和声短音階を見てみよう。

例えば分かりやすい「E7➡Am」というコード進行に於いてバークリー・メソッドは「E7」に使う主なスケールに「E Harmonic minor Perfect5th Below(HMP5⬇)」という経典のような名前を付けているが、これは簡単に言うと「Aの和声短音階を完全5度上のEから始めたスケール」という意味である。

行き先のAmをターゲットにしたスケールというホリゾンタルな概念が強く出ているので「何とかアン」と呼ばれる無意味に記号化(固定化)したスケール・ネームより「生々しく動いていて」覚えづらいのである。

リディアン・クロマティック・コンセプトにおいては濱瀬さんの仰有る通り「リディアン・スケールの特定」に常に重きをおくのであるが、この時に肝心なのは「最もインサイドに解釈可能なリディアン」を選ぶ点にある。

E-F-G#-A-B-C-D
➡A Harmonic minor scale の 【E】START 

の出身リディアンは何であろうか?を考えれば良いのである。
探すときの鉄則は「偏り」にある。

明らかに「G#音」が浮き出ているので、これが有るために「Augment」か「Dimnish」を形成する様な「トニック」を探せばよい。

答えは「F Lydian」である。

「F Lydian」に、ディミニッシュ(♭3rd/#2nd)の構造を付加したものと解釈をすることになる。

ジャズのコードネームの「三度堆積」に配慮し過ぎた為に(彼は当初ジャズミュージシャンのために書いた)、♭3という記載しかないというのが理由である。
確かにここは「理論書」として見た場合には抜け落ちていると言える。

エンハーモニック(異名同音)を全て網羅してしまうと余りにも階層が煩雑になるので、初学者には厳しい。
と判断したのであろうか、若しくは本当に抜け落ちたのであろう。

まとめるとE7➡Amは、

F Lydian(9T.O.) Mode Ⅶ➡C Lydian Mode Ⅵ
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という#方向への動きになる。
これはG7(F Lydian Mode Ⅱ)➡C△7と同じ調性の動きをしている。

試しにE7(Harmonic minor)からC△に着地してみると調性的に違和感が無いのが分かる筈である。

...確かに濱瀬さんの気持ちも分かるような気もする。







文責:彦坂
 

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