ポップスの天才・槇原敬之 冬がはじまるよ

2020/03/19


「冬がはじまるよ」作曲:槇原敬之

この曲は本当にスゴいです。
小学校の時には何気なく聞き流して居ましたが、なまじっか音楽を学んでしまったので本当のスゴさが解るようになってしまいました。

私が普段、バカの一つ覚えの様に言っている、verticalとhorizontalの異次元操作をこんなに簡単にやっている例があったとは。

コード進行も決して凡庸ではないですし。(VIm-IIImはアカデミックな人はやらない)

ただ、本当に驚くべきはメロディとコードのトニックのズレです。

◼Section A
この曲はどう考えてもメロディは「AMajor」にトニックがあるのです。
しかし、支えているコードは「F#m」です。

主人公の女の子(メロディー)が笑顔で立っている背後には、荒んだ廃墟(コード/背景)があるくらいの異化効果を感じます。
「冬」というのは一般的には「暗く切ない、冬眠、寂しい、別れ、死」などを想起させます。
シューベルトなどは典型的ですね。

しかし、クリスマスもあるし、好きな彼氏や彼女や家族が居る人間にとっては暖かく、甘酸っぱい季節でもあるのです。
桑田佳祐の夏とは別のロマンス。

山下達郎もその辺りのセンスが抜群ですが、槇原敬之はその上を行っています。
あまりにも繊細すぎてその分ポップでは無くなっているのですが(あくまでも山下達郎と比較してなので超ハイレベルな次元で)。

◼Section B
では、普通のIIIm-VImですが繰り返すことにより恋愛心理の行きつ戻りつが絶妙に現れています。
私の様なクズには、こんな全うな恋愛はだいぶ縁遠き話になりまして、その若さに嫉妬すら感じますが...。

そこから、立ち直るかの様に「ワクワクするよーな」でIIm➡IIlmと平行で上がっていった先には何と「Dm」(究極的に切ないけれど吹っ切れた)がくるのです。
そして、ここのメロディーのトニックは「CMajor」なのです。やはり明るい。

コードはやっとこの曲のprimaryなトニック「AMajor」へのドミナント「E7」が出てきましたが、サビで更にどんでん返し。

◼Section C(冬がはじまるよ~のとこ)
メロディーはCMajorのままで(何せド-ソ、ド-ソ、ソファミファ~だもの)でKeyは「Am」に行きます。
ビートルズもビックリの進行で、どちらかというとスティーヴィー・ワンダーランドです。
途中も洒落ていて「すご~く嬉しそうに雪にはしゃぐ横顔がいいね」のところでは「A♭Major7」が出てきます。
ここもメロディーは決して「Am」ではありません。
つまりこのセクションはKeyは「Cmajor」とも捉えられる。そうすれば単なるサブドミナントマイナーで頭も楽です。

譜面には載って居ませんがここの2回目は「Am」ではなく「AMajor」で半終止します。(全終止感はありません)何と鋭いセンスでしょうか。ゲイが細かい。

最後の最後でやっと本格的に「主役」の「AMajor」のllm-V-Iが出てきます。
タメにタメた上での「真打ち登場」ですね。

このメロディーとコードの関係で感動できる様になったらアナタは相当に耳と感性の優れた音楽家です。
プロなのに、「えっ、普通じゃん」と聞き流しているうちはまだ素人の域を出ていないので、もう少し真剣に音楽と向き合いましょう✨

クラシックの凄まじい構築力も良いですがポップスの天才も相当に震えが来ます。
槇原敬之は幾つかとんでもない名曲がありますよ。




文責:彦坂

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