「旋法フーガ」の応答(答唱)について考える

2022/02/17

現在のフーガは「同度カノン」(輪唱)から発展したものです。

作曲家はあくまでも自分が生きている時代のスタンダード(常識・標準)で書いているので、当時の「フーガ」と言っても「今のカノン」を指していることもあります。

そして、厄介なのが古典的(ハイドンやモーツァルト)な長・短調なのか、中世の教会旋法(モード)なのか特に明記はされていないので、同時期の作曲家や、権威ある理論書にまで踏み込んで行かないとその内容を明確に把握することはできません。

理論研究者の場合はそれを全て詳(つまび)らかにする使命がありますが、作曲家はあくまでも書きたいものを書けば良いのです。

要は五度上で応答が始まった方が立体感が出ますし、主調に戻り易いというところがポイントなのでしょう。

フーガの教本によく応答は「五度上(四度下)で、属調で行う」と書かれていますが、これもC dur➡G durと捉えているものと、調性はそのままで、単に同調内の五番目(5th)から始めるものがあり混乱します。

旋法フーガの場合は2つの声部で同じモード、異なるトニックと考える方が長・短調以上に「2つのライン(Horizontal/Modal)」が際立ちます。機能和声的(Vertical/Chordal)には「対斜」という禁則に触れますが、対位法の本来の持ち味はあくまでも「メロディが優先」なのです。

J.S.バッハの音楽は基本的に機能和声の感覚で捉えられるのですが、この点に関しては意外に逸脱していたりするところが魅力です。
彼は横のラインも崩さず、コード進行としても統一感が出るように工夫したところが偉大であると言えます。
何が正しいかよりも、実際に作品に当たってみて自分で仮説を立て、検証することがとても大切です。

理論は参考程度にしておいて、自分の感覚に自信が持てるまで試してみることをオススメします。

◼Dドリアン(応答はAドリアン)の作例◼
Music by Yasuto Hikosaka
(1)主音からスタート



(2)第五音からスタート➡変応している。こちらも敢えてしなくても構いません。



文責:彦坂

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