黒澤 明と武満 徹

2017/01/04 [映画・映画音楽]

黒澤 明と武満 徹
 

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どですかでん
影武者

この三本の映画で彼らは様々な「対立」を起こしている。
通常、対立等というものは醜いエゴのぶつかり合いや利権問題に過ぎないのであるが、彼らのそれは「個性と個性」の見事な切り結びであるからこそ美しい。(当事者たちにとっては堪ったものではないだろうが)

影武者において、黒澤は武満に「マーラーの交響曲の様なものを」と方向性を提示する。
武満は「それならマーラーを使ったらどうか」と返す。
「いやいや、マーラーを超えて欲しいんだよボクは」と言った途端、武満は「バカなことを」と弟子筋の池辺晋一郎(現・東京音大)を紹介し降りてしまう。

何とか宥めすかされ「乱」。
しかし、これは彼らにとっても乱であった。
黒澤は武満が付けた音楽の低音を勝手にミキシングで上げてしまう。
ブチキレた武満は「僕の曲はこのまま使って構わないが一切名前は出さないでくれ」と帰ってしまう。
いざ録音の際も、名も知れていて映画音楽に手慣れたロンドン響を黒澤は指定するが、武満は「彼らの荒れた音は好きではない、札響にしてくれ」と譲らない。

「札響?」そんな日本の楽団に俺様の映画音楽を任せるのか!
黒澤は怒るが、武満が頑なに聞かない為に、札幌まで付き合うとそこでは素晴らしい演奏が成された。
黒澤は「こんなに素敵な演奏をありがとうございます」と暫し頭を垂れたという。

しかし、武満のご機嫌直らない。
何とスタッフロールで「音楽 武満 徹」のシーンだけ無音にする。
本当に困った人達である。

更に完成祝賀会のあと皆が帰った側から、武満は「明日ハ晴レカナ曇リカナ」の原型となる歌を弾き語りし出す。
あの歌は指示がご機嫌次第で変わる「お天気屋」の黒澤に当て付けた歌なのである。
とても、明るい歌なのだがこんな裏事情があったとは。

「クロサワのご機嫌」は明日は良いかな悪いかなぁ~とアイロニーとユーモアに満ちた歌なのである。

それにしても、面白い。
黒澤は180cmを超える巨漢。対する武満は160cm代の痩せて病弱な身体をしていた。

しかし、この両者はお互いに一歩も譲らない。
そんなことを思いながら黒澤の映画を観てみると何となく微笑ましくもあり、背筋が伸びる思いでもある。

どですかでん
は独特の諦めにも似た明るさが聴こえてくるが、これは彼らの未来の衝突を暗示する前哨戦に過ぎなかった。
笑顔の裏には夜叉が居る。

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