【Memory】キャッツより~作曲:A.Lloyd.Webber-ボイストレーニングのプルメリア音楽教室ー

2019/12/08

音の遠近を利用するには?
~和声学と融合するマニアックなアイディア~

【Memory】キャッツより~
作曲:A.Lloyd.Webber

今回は「オペラ座の怪人」、「キャッツ」、「エビータ」など、数々の世界的ミュージカル音楽を手掛けたことで知られる作曲家アンドリュー・ロイド・ウェーバー(英/1948- )の巧みなコード使いについて分析をしてみよう。

劇団四季でもお馴染み「CATS」の中でもとりわけシングルカットされることが多い「メモリー」の中間部冒頭に現れる、

「Dm - Dm on E♭- Cm/E♭」というコード進行。

おそらく、多くの方がこのハーモニーの「浮遊感」に「おやっ」と思ったことがあるだろう。
しかし、そこから先を掘り下げてみた方は少ないはずである。

大半が旧来の和声・コード理論の知識で「倚和音(いわおん)」又は「オン・コード」(ハイブリッド)と判断して終わってしまっているのでは無かろうか?

いや、実に勿体ない。
これは音楽的にもっと深く追求してみる価値のあるコード進行だ。

機能和声で考えるとここは「B♭MajorからFMajor(またはDm)」、更に先まで見て「CMajor」へ転調しているとも取れるがどうもシックリ来ない。
こういうときに使うのが「モードの物差し」である。

グレゴリアン・モードで考えた場合は「B♭ Ion.(Major)」から、その平行調「(G Aeo.(Natural minor)のドミナント・マイナーである「Ⅴm(Dm)」へ飛んだとも解釈できるし、単に「Dフリギア」に突然、旋法が移動した様にも見える。

しかしこれは作曲家の頭の中を覗かないと分からない。
「単にそのコードが思い浮かんだ」というのが真実かもしれない。

それよりも「何が起きている」か「なぜスゴいのか」を捉えられる様にすることを優先しよう。

では、譜例(上段)を見てみよう。
ここの部分は明らかに単なる「長短調の世界」からは逸脱している。

基本的に「Dm」➡「Cm」という様な「隣接している同種和音の連続」は機能が不明確になる為に、「何調」で分析しようが度数を書いてそれで終わってしまうからである。
そこで例の「リディアン・クロマティック・ナンタラ」をも一緒に活用してみることにする。

このコンセプトは「リディアントニック」の存在が「核」であり、それ以外は「単なるコードジャンル」または「リディアントニックからの距離」のみで、旋律や和音を測る。
その為、コードがはっきりと分かるものはもちろん、単旋律や無調になろうとも分析は可能なのである。
調性感を感得する訓練は当然必要であるが・・・。

最初の関門は「リディアン・トニック」を探すこと。

基本的な三か四和音の「メジャー、マイナー、7th、m7(♭5)」であれば自動的に「リディアン・トニック」を割り出せる。(作曲者が意図的にずらしている場合を除き)

ここの動きだけを見ると

①Dm ➡ F Lyd.Mode Ⅰ
②次のは「おいしい」ので置いておく
③Cm/E♭➡ E♭Lyd.Mode Ⅵの3rd Bass(またはMode Ⅰ「E♭6(omit5)」)

と捉えることができる。
中身の構成音はどうなろうが「リディアン・トニック」は動かない。グラデーションの違いなのである。

つまり、ここでは大きく「Flyd.➡E♭lyd.」と「♭方向」へ2つTonality(調性)が動いたことを感得できれば良いのである。
「T-S-D(とSDM)」のみでは行き詰まるし、コード進行を暗記しても深い応用はできない。

さて、問題のサンドイッチの具、②の「Dm/E♭」とは何であろうか?

確かに「倚和音」的な役割をしているし、ハイブリッド・コードなのだが、もっと大切なのは「E♭lyd.」の中から選ばれた音が乗っかっているという様態である。
譜例(下段)を見てみよう。

アンドリュー・ウェーバーが選んだ音は「D,F,A(Dm)」という三音。

今回は「倚和音の役割と調性」を崩さずにリハーモナイズしてみる。
その為、古典和声的な縛りを課すことにした。

・メロディ「A」とベースの「E♭」は変えない。
・トップノートから「3rd」を構成している「F」も固定。

つまり、あと「1音」のみカラーを使えるとしたらどれを選ぶかを考えることになる。

少し見づらくて恐縮だが「円系図」の右にウェーバーが選んだ以外の三例を挙げてみた。
円系図に○を付けたのはトニックと「使用必須」&「ウェーバーが選んだ「D」。

これを元に残りの色でボイシングしたものを掲載した。
「一番左と真ん中」の譜例は解決先のコードと共通の「G」,「C」が有る。音楽的には使用可だが、和声進行としてはつまらない。

最後に残った「B♭」のみが倚音としての効果が得られる➡(a)の和音。
これが答えである。

ウェーバーの「D」は「トニックからの距離」では上を行っている。

ここでは円系図を単音で見てほしい。
「E♭」から見てみると「B♭」はお隣であるし、「ペンタトニック」を形成できるので親和性が高い。

「D」はスケールに「半音」を含む「ヘクサトニック」の領域に踏み込んでいるのでこちらの方が調性を保ったまま「刺激的なコード」になる。

この「綱渡り」の様な選択を恐らく「感性」でやってしまっているところがウェーバーの驚異的な才能なのである。

文責:彦坂

























































































































 

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